所有する沈黙の解像度 Yui Onodera
Yui Onodera diagram no.1
如何に最小限の音(量、数)で空間と時間を構成するか、という引き算の美学は日本庭園などにもよくみられる日本古来の美意識に基づいたものである。先ず時間があるのではなく、音と音との“間”に時間が生まれてゆくという控えめな姿勢は、その静寂によって受け手の想像力の喚起を促す。それは機能を強制するオブジェクト化された大文字の音楽ではなく、ゆっくりと周囲を包み込み、鳴らされうる環境を許容し、調和をもたらす、弱い音楽である。
Yui Onodera diagram no.2
明確な全体を持たずに部分と部分の局所的な関係性から音楽が形成されてゆくことで、分節され、完結するという在り方から距離をおき、曖昧な秩序によってもたらされる明確な始まりと終わりを持たない未分化なストラクチャーが生まれる。
Yui Onodera diagram no.3
可塑的に変容してゆく都市の一時的出来事、記憶の場としての環境音。それらの互いに脈略のない断片的な事象と、体験の集積を関係づけてゆく作業によって、ひとつの音楽が織りあがってゆく。
固定的なデザインの対象でありながら、多様性に富んだ音の特徴を持ち、そこに歴史と文化を持ち込むもの。日常においては意識的に聴かれることのない、秩序への指向を持たないミクロな音群も、プリミティブな音楽体験として感受され、私にとっては立派な楽器の一つでもある。
Yui Onodera diagram no.4
それは時間の連続である以上、一挙に体験出来るものではない。耳を澄まし、時間的な経過に伴って様々な情報を収集し、それらの積算としてある印象が感覚として残るものである。
・社会的慣習が音楽に与えた名称を裏切ること
・機構や権力の意志の表現としての「音楽」ではなく、個人(民衆)の意思の表現としての音楽であること
・環境と人を繋ぐ中間領域として、構造ではなく関係性を作り出すこと